調査の背景
和歌山市では、進学や就職を機に若年層が県外へ転出する傾向があり、将来的なUIターンにつながる継続的な関係づくりが課題とされていました。シナジーマーケティング株式会社は、転出そのものではなく、転出後に地域との接点が途切れてしまうことに着目し、転出後もつながり続けることを目的とした関係人口創出モデル「FAVTOWN」を構想しました。
2022年10月17日には和歌山市と「和歌山市関係人口創出モデル実証事業」に関する連携協定を締結し、2023年2月に「FAVTOWN Wakayama」のサービス提供を開始。以来、「ふるさと便」の送付や市内開催イベントの情報提供などを通じて、和歌山市をふるさとと登録する8,000名以上の会員に「地元愛」が伝わるコミュニケーション施策を展開しています。
行政では「地方創生2.0」構想のもと「ふるさと住民登録制度」の制度化が進められており、自治体には関係人口施策の効果を裏付けるデータが求められる状況です。今回のアンケートは、こうした状況を踏まえ、実証事業の起点である和歌山市において、「FAVTOWN」の利用と実際のUIターン行動の関係を検証するために実施されました。
調査結果のポイント
1. UIターン者の67.2%が「FAVTOWN」の利用を後押しと実感
和歌山市へUIターンした61名のうち、67.2%(41名)が「FAVTOWN」の利用を「地元に戻る」後押しとして回答しました。内訳として「歓迎されている安心感で前向きになれた」が45.9%(28名)、「なんとなく前向きになれた」が19.7%(12名)、「就職活動の一歩になった」が11.5%(7名)、「不安や悩みが減った」が8.2%(5名)でした(複数回答)。就職活動の一歩になったと回答した7名は、いずれも「FAVTOWN」掲載企業への応募など具体的な行動に結びついていました。
2. 引越しの決め手は「地縁・ゆかり」と「地域への愛着」が多数
引越し先の決め手として最も多かったのは「地縁・ゆかり」で55.7%(34名)、次いで「この地域が好き」が42.6%(26名)でした。このうち、「FAVTOWN」の後押しを感じた人の割合は、「地縁・ゆかり」を決め手にした会員で76.5%、「この地域が好き」を決め手にした会員で73.1%と高くなっています。和歌山市へのUIターンでは、地縁や地域への愛着が大きな決め手となる傾向が見られました。

3. 県外在住者の約9割が和歌山県へのUIターンに前向きな意向
和歌山県外に住む「FAVTOWN」会員197名のうち、「帰りたい」と回答した人は61.4%(121名)、「条件次第」を含めると90.4%が和歌山へのUIターンに前向きな意向を示しました。学生(118名)では「帰りたい」の割合が66.1%と高く、卒業後の進路として和歌山が具体的な選択肢になっていることがうかがえます。一方、社会人4年目以上(12名)では25.0%にとどまりました。Uターン意向が高い学生のうちから地域とのつながりを維持し続ける施策の重要性がうかがえます。

4. UIターンに至るまでの期間は平均21.6か月
「FAVTOWN」登録からの経過期間別に移住率を見ると、登録1〜3年の会員(165名)が25.5%で最も高く、登録1年以内は17.3%(168名)、登録3年以上は4.7%(64名)でした。「FAVTOWN」登録後に和歌山市または和歌山県内へ移住した56名では、登録から引越しまで平均21.6か月(中央値23か月)を要しています。

5. 「FAVTOWN」企画への参加経験がある会員ほど移住率が高い
「FAVTOWN」の企画(ふるさと便・イベント・プレゼント等)に1回以上参加した会員の移住率は20.6%(56/272名)で、一度も参加していない会員の14.4%(18/125名)を6.2ポイント上回りました。企画の種別では、イベント参加者が24.6%(31/126名)、ふるさと便参加者が22.7%(37/163名)、プレゼント参加者が19.6%(38/194名)と、いずれも企画非参加会員の14.4%を上回り、企画への参加経験と移住行動との間に関連がみられました。

6. UIターン実現に必要な条件は「魅力的な就職先」と「給与・待遇」
和歌山県外に住む会員197名に、和歌山へ戻るために必要な条件を尋ねたところ、最も多かったのは「魅力的な就職先」67.5%(133名)で、次いで「給与・待遇が都市部並み」47.2%(93名)となりました。回答者の中心である学生でも、仕事に関する条件が多く挙げられました。また、10代では「友人・コミュニティ」を挙げた人が42.9%と、全体の31.0%を上回る結果となりました。

調査結果からの全体考察
今回の調査では、転出後も地域との接点を維持することが、UIターンへの心理的な後押しにつながる可能性が示されました。特に「地縁・ゆかり」や「この地域が好き」といった地域への愛着を決め手とした人ほど後押しを実感する割合が高く、また企画に参加した会員ほど移住率が高いことからも、関係人口施策は単に地域と関わる機会を増やすだけでなく、地域との関係を継続的に育むことが重要であることがうかがえます。登録から実際のUIターンまで平均21.6か月を要していることからも、関係人口施策は短期的な成果ではなく、中長期的な視点で評価・運用する必要があることが示唆されました。
一方で、県外在住会員の約9割が和歌山県へのUIターンに前向きな意向を示したものの、実際に戻るために必要な条件として「魅力的な就職先」や「給与・待遇」が挙げられています。これは、地域への愛着や心理的な後押しだけではUIターンは実現せず、雇用や生活環境といった構造的な課題への対応も不可欠であることを示しています。特に10代では「友人・コミュニティ」を重視する傾向も見られ、年代に応じた関係づくりや情報提供の重要性もうかがえます。
「FAVTOWN」とは
「FAVTOWN」は、進学や就職で地元を離れた若者を中心に、地域にゆかりのある人が地元とのつながりを継続・深化できる会員制の関係人口創出プラットフォームです。シナジーマーケティング株式会社は、CRM(顧客関係管理)の知見を地域政策に応用し、転出後に地域との関係が途絶えるという課題の解決に取り組んでいます。地域に関わる人々を「資産」として数値・データで捉え、自治体・地元企業・大学・団体と連携した継続的な接点を設計している点が特徴です。
主な機能は、地域の特産品や応援メッセージを届ける「ふるさと便」、地元ニュースの配信、デジタル会員証の発行、会員データに基づく関係人口施策の運営です。2023年2月に和歌山市で開始し、2026年7月時点で累計7都道府県24自治体、会員15,000人以上に拡大しています。
今後の展望
シナジーマーケティング株式会社は、今回の調査で得られた会員データと移住行動の関連性を踏まえ、自治体の関係人口・UIターン施策の検討に向けたデータ提供を進めてまいります。会員数の拡大にとどまらず、登録から移住までの期間に応じた継続的な情報提供の設計に取り組んでいくとのことです。
UIターン者の声
和歌山にUIターンした会員からは、以下のような声が寄せられています。
-
「新卒で大阪に就職しましたが…だいすきな和歌山が恋しい…すぐに和歌山に戻ってきてしまいました」
-
「地元の病院で働きたいという思いで地元に帰ってきました。慣れ親しんだ地域で働けて凄く嬉しい」
-
「これからもFAVTOWNの活動楽しみにしています」
-
「和歌山にもっと恩返しがしたいです」
アドバイザーのコメント
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)講師の伊藤 将人氏は、今回の調査から見えてきたのは、「関係」の中身を詳しく把握すること、関係の維持がどのような行動や心情に結びついているのかを確認することの重要性であると述べています。また、中長期的な視野での政策実施の必要性も示されており、関係人口政策や移住政策は人の人生やライフステージの変化と密接に関わるものであるため、中長期的な視点で望むことが重要であると指摘しています。
和歌山市シティプロモーション課のコメント
和歌山市シティプロモーション課は、令和4年度に実証事業としてスタートした「FAVTOWN」を通じた継続的な関係づくりが、Uターンの実現に有効であるという結果が示されたことを喜び、本調査の結果を踏まえ、今後も進学などを機に和歌山を離れた方との中長期的な繋がりを維持する関係人口施策や雇用環境の整備などに取り組むことで、より多くの方に和歌山市と関わりを持っていただき、Uターン移住の促進にも繋げるなど、当事業が本市にとってより意義あるものとなるよう、さらに推進していくとコメントしています。
調査概要
-
調査名:2026年和歌山市UIターンアンケート
-
調査主体:シナジーマーケティング株式会社
-
調査対象:「FAVTOWN Wakayama」会員のうち、和歌山市にゆかりのある会員
-
調査方法:WEBアンケート調査
-
調査期間:2026年4月30日(木)〜2026年5月24日(日)
-
有効回答数:397名(回収率:5.5%)
※本調査は「FAVTOWN」会員を対象としたものであり、和歌山市へUIターンした方全体の割合を示すものではありません。数値は「FAVTOWN」会員(もともと地域とのつながりに前向きな層)内の傾向です。
会社概要
-
名称:シナジーマーケティング株式会社
-
代表:代表取締役社長 兼 執行役員CEO 奥平 博史
-
創業:2000年9月
-
大阪本社:〒530-0003 大阪府大阪市北区堂島1-6-20 堂島アバンザ21F
-
東京本社:〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6-2 番町麹町ビルディング5F WeWork 麹町
-
事業内容:デジタルマーケティング領域における、クラウドシステム・コンサルティング・運用支援・人材育成サービスの提供、およびファンメディアの運営
FAVTOWN事務局
E-mail:favtown-support@synergy101.jp
この調査結果は、地域と人とのつながりがUIターンを促進する上でいかに重要であるかを示しています。和歌山市の取り組みが、他の地域での地方創生にも役立つヒントになるかもしれませんね。

